1 危機管理業務の流れ

危機管理を考える場合、より重要なのは業務の流れである。この手順が確立されていないと、継続的な判断とその適否をチェックすることができなくなり、その場しのぎの判断の連続に陥ってしまう。

① 情報

国家情報局、国家サイバー統括室、警察、消防、自衛隊、気象庁、自治体、各省庁などから情報が集約される。

② 判断

集められた情報を分析し、「これは地方レベルの事態なのか、国家レベルの危機なのか」を判断する。ここに国家情報局、国家安全保障局、国家危機管理部門などの官邸機能が大きな意味を持つ。

③ 調整

国家として何を優先するかを決定する。

人命救助なのか、治安維持なのか、重要インフラ維持なのか、避難なのか、国防なのか。

複合危機なら複数を同時に行う。

ここで内閣府・内閣官房による「横ぐし」(統調整)が必要になる。

④ 命令

総理・内閣が国家方針を決定し、各行政組織の指揮系統へ政府意思が指示される。

⑤ 執行

それぞれの専門的指揮系統で任務を遂行する。

今回の改革によって、「情報→判断→調整」の部分は相当に強くなりつつあるが、次の問題は、「判断→命令→執行」をどう制度化するかが課題になる。

2 平時から、緊急時・国家非常事態・戦時への移行

この仕組みを完成させるには、事態の段階区分「平時→緊急時→国家的非常事態→武力攻撃・戦時」と移行条件を明確にしなくてはならない。

原則は、次のようになるだろう。

  • 平時には、地方自治と各行政組織の自律性を最大限尊重する。
  • 緊急時には、国が情報収集・広域調整・資源配分を強める。
  • 国家的非常事態時には、専門的指揮系統そのものは維持しつつ、国家目標・優先順位・人的物的資源配分について総理・政府の統制を強くする。
  • 武力攻撃事態時には、国民保護を含む国家防衛体制へ移行する。

危機の深刻度に応じて国家の統制強度を段階的に引き上げる制度が必要で、あくまで平時の地方自治を成り立たせるための一時的な措置であって、「地方分権→中央集権」という単純な切替えではない。

国家的危機が発生したとき、

〇誰が「国家非常事態」と判断するのか。
〇どの時点で国の統制を強めるのか。
〇総理は各大臣・地方公共団体に何を命じられるのか。
〇警察・消防・自衛隊の専門的指揮権と統制との境界をどうするのか。
〇国会による統制をどう確保するのか。
〇いつ平時の分権体制へ戻すのか。

この法的な「モード切替え」が次の制度課題になるが、これは人材育成のレベルと連動した業務要領の問題でもある。

制度と業務と人材育成は常に、連動する。

3 結言

現存の内閣府は、さまざまな機能が寄せ集められた会議体の集合組織の感が強く、必ずしもシステマティックに設計された組織ではなく、極めて省庁属人性の強い組織体になっているのが現状である。

各種の安全保障機構も出来たばかりで、人材は寄せ集めで業務要領も確立しておらず、実務を通じて実質的な活動経験を積んで育てていこうという段階である。

今回の内閣改造で、日本の危機管理制度は、省庁「縦割り型」から、総理を中心として国家全体を統括・統制する「ネットワーク型」への移行に着手し、その司令塔として内閣府強化に着手した。 総理のより強いリーダーシップの発揮こそが、制度と業務と人材育成の連動を促し、日本の安全保障制度を確立する早道になるだろう。

高市改造内閣にみる内閣府・官邸機能の強化(その1)――総理を中枢とする危機管理の統括体制へ – 一般社団法人災害防止研究所