大きな組織の中で働いていると、組織のルールを覚えたり、人間関係に気を遣ったりしているうちに、自分の個性を発揮することをついつい忘れてしまいます。むしろ、知らず知らずに、抑えてしまうのかも知れません。

私は、自衛隊の部下にも、ゆうちょ銀行の管理職の研修でも、よく言っていたことがあります。

「歴史上名前を残した人を思い出してご覧なさい。あなたの周りで仕事ができる人を思い浮かべてご覧なさい。

他の人ができなかったことを成し遂げた人が歴史に名前を残しているでしょう。

仕事のできる人は、他の人が持っていないものを持っているでしょう。

私は、皆と同じことができます。と言って、自慢している人はいないでしょう。」

「何故か、知らず知らずのうちに、皆と同じでなくてはいけないと思い込んで、勘違いしている人が多いのですが、実は、皆さんに求められているのは、他の人と違う視点で、あなたにしかできない仕事をすることなのです。」

「大きな組織になればなるほど、組織運営の効率性を高めるために、用語の使い方を決め、仕事のやり方を統一的にして、共通認識を持たせ、意思疎通が円滑になるようにしますが、それは仕事の目的ではありません。

アナログ的に、ITの使い方を教えているようなもので、仕事をするための道具でしかないのです。

その段階で、負けて、ヘタレてしまってはいけないのです。

どうやって、あなたにしかできないことを見つけるか。

組織は、あなたにしかできない仕事を見つけることを求めているのです。それは与えることができるものではないので、一人ひとりに、自分で見つけてもらいたいのです。」

「誰かが、“私は皆と同じ仕事ができます”と言ったとしましょう。きっとあなたはこう言うでしょう。“だったら、あなたじゃなくても結構です。私がよく知っている人がいますから”。」

「織田信長は、織田信長にしかできないことをしたから、織田信長になったのです。あなたにしかできないことがある、つまり個性がある人が、仕事のできる人なのです。」

そう思って部下を見ると、また今まで見えなかった部下の姿が見えてくるはずです。自然に、部下の個性を大事にして、自主性を促すようになります。

これはリーダー本人に、求められていることでもあります。

リーダーは、リーダーにしかできない仕事があります。リーダーであるあなたにしかできない仕事をしなくてはなりません。

部下の仕事は、部下の仕事。リーダーの仕事は、部下が仕事で解決したくてもできないところ、リーダーにしかできないところに存在するのです。

最も代表的なリーダーの仕事は、部下が働く環境を整えることです。

例えば、職場の物理的な環境を整備すること。

職場の問題点を解決、改善すること。

仕事に必要な物や金を用意すること。

職場の人間関係を調整すること。

業務要領を改善すること。

上司や他部署との関係を円滑にすること。

こうやって、部下のために、部下のできない仕事をするリーダーが、優れたリーダーなのだと思います。

組織を作り、仕事のやり方を工夫して新しいシステムを作り、組織を動かすことができるリーダーです。