精華町総務部 参事兼危機管理監の野村佳正氏に、電話でお話しを伺いました。

■地域の特性(国土強靱化地域計画から)

京都府南西端に位置し、精華町域には木津川、山田川、煤谷川等が流れ、地形的に三分割される。西部と南部は丘陵、東部は平坦な農地、東端に木津川が流れる。東は一部木津川を挟んで木津川市、西は生駒市、南は木津川市と奈良市、北は京田辺市と接している。

近傍に位置する生駒断層による地震、木津川沿いの堤防決壊が予想されているが、災害が非常に少ない。

昨年4月1日付で「けいはんな地域広域基本計画」が国に認められ、企業立地促進法に基づいて、3府県8市町が連携した広域での学研都市形成を推進している。

■内容

 現在の職は、どのような仕事になるのでしょうか。

 総務部参事兼危機管理監で、副町長(前総務部長)の肝いり設けられたと聞いています。

ラインに置くか、スタッフにするかの検討があり、陸上自衛隊にも相談した結果、自衛官は地方自治体の行政の実情を知らないので、ラインよりもスタッフが適しているだろうとの判断になったようです。平時は、総務部長の下で参事の職を執り、災害対策本部が設けられたときには、本部長である町長の下で危機管理監として、直接、災害対応に当たることになります。

ただ、参事の職務の内容は、明確になっていなくて融通無碍に、必要に応じて仕事をしています。

 他の自治体はどうなっているか、ご存じですか。

 自治体毎に異なっていて、ラインに就いて仕事をしている方もあれば、市長直属のスタッフとして勤務している方もいるようですが、夫々に事情も苦労もあり、一概にどちらが良いとは言えないと思います。

 どのような災害を予想し、重視されているのでしょうか。

 ハザードマップでは、生駒断層帯他による直下型の地震を予測し、木津川の氾濫を予想していますが、基本的に、災害の非常に少ない地域です。

災害の恐れが少ないというので国立国会図書館の分館が設置されていますし、昨年4月には国に「けいはんな地域広域基本計画」が認められ、3府県8市町が連携して広域での地域開発、学研都市形成を推進しようとしているところです。

陸上自衛隊の弾薬支所が祝園に置かれているのも、災害の恐れが少ないからでしょう。

 そのような環境ですと、住民や市の職員の防災意識はどうでしょうか。

 日本各地での災害が増えていますので、以前より関心は高まっていますが、全般に住民の関心は低いと思います。特に、ニュータウンに「災害が少ないので移住してきた」という人たちには、防災ということに戸惑いを見せる方が多くいます。

市の職員も、これまであまり考えたことがなかったという人が多く、国や府の施策や指示を受けて、追いかけられている状況です。

 消防の態勢はどのようになっていますか。精華町の消防は、町で独自に運用できるようになっているのでしょうか。

 消防は精華町が単独で運用しています。広域の防災に入っていないのは、祝園の弾薬支所があることが理由かもしれません。

消防関係者は約50人で、勢力が小さく、現業(消火、救急)に忙しいので、防災に関わる行政に取り組む余裕はない状況です。

消防団は消防本部の隷下にありますが、補助金申請の予算化、議会説明、決算報告等の業務処理能力が十分にないのが実態です。

 勢力が50人程度だと、現場の人材育成に精一杯で、行政や防災に関わる運用の知識やノウハウを養うだけの余裕はありません。どこの自治体でも、行政面や防災全般の運用面等で、消防をどのようにして支えるか、どのように使うのかが地方自治体の考えるべき課題になっています。

ところで、精華町では、国土強靱化地域計画はどのようになっているのでしょうか。コンサル会社を使って策定している自治体も多いようですが、現状を教えてください。

 今、町が策定するあらゆる計画について、国や府の承認をとろうとすると、例外なく防災上の処置ができているかどうか、防災計画を問われます。

「けいはんな地域広域基本計画」策定時もそうでしたし、都市計画についても地目を変更して住宅地にするとなると、その防災対策を示さなくてはなりません。コンサル会社が策定するのは無理だと思います。

その仕事がすべて危機管理監のところに回ってきていますが、私にはスタッフがいません。危機管理室があるのですが、スタッフが限られている上に時間で迫られて、矢鱈と忙しい思いをしました。計画を作るのが得意だったので良かったですが、本当に大変でした。

お陰様で、計画を体系化することができ、町のすべての計画について何を問われても答えられるようになりました。

Q 国は、国土強靱化計画を国のアンブレラ計画と位置づけて各省庁の計画を体系化し、予算査定についてもフィルターをかけていますから、自然、地方自治体もそうなっていきます。

大変だったでしょうが、さきがけとして、やり甲斐のある、良い仕事をなさったのだろうと思います。そういうタイミングに出会うことはなかなかありません。

 町の長期計画はどのようなものがあって、その策定時期はいつになっているのでしょうか。

 総合計画、都市計画は、10年計画で、2年後に見直しのサイクルがきます。私はあと1年の任期ですから、できるところまでやって、後任に引き継ぐことになります。

 自主防災組織などはどうなっているのでしょうか。

 自主防災組織作りはこれからの課題です。どうやって組織を作るのか、リーダーの育成をどのようにするのか、学校教育への防災教育の反映等、課題が山積しています。

消防団が自主防災組織のコアになるのだろうと思うのですが、消防団を2次募集、3次募集しても、必要な人員が集まらない状況です。

防災計画を策定しましたが、要配慮者の避難処置等の避難行動計画などをはじめ、実効要領を具体化して、定着させることがこれからの課題です。

 長時間、ありがとうございました。

【後記】

精華町は、3府県8市町が連携した「けいはんな地域広域基本計画」を推進しているので、京都府から、防災計画と国土強靱化地域計画の整合性を強く求められているのでしょう。

国や府は、国土強靱化施策の一つのモデル作りを意識しながら指導しているのではないかと思います。

今後、国土強靱化計画をアンブレラ計画として各種計画を体系化することにより、自治体の部課毎に作成していたバラバラな計画の一体化が進むと、部署間の連携が取りやすくなると同時に、防災施策が進めやすくなると思います。

10年計画である総合計画、都市計画の見直しが2年後だということでした。

計画を作る過程で縦割りの業務を排して、職員の意識がまとまり、一体的な組織運営ができる組織基盤を作る絶好のチャンスです。

整合の取れた計画を作るのは、段階的なスケジュール調整と、意思疎通を図るノウハウを伝えることが不可欠です。

仕事の進め方は、このような手順になります。

① 企画部門で「方針案」を出して審議し、「方針」を決定する。

② 出された「方針」に基づいて「各部門の構想(計画の骨子)」を策定し、整合を図る。

③ 整合の取れた「構想」に基づいて「計画」を策定し具体化する。

④ 「計画」に基づいて、関係部署間で実行要領を調整する。

⑤ 実行する。

業務要領をルール化し共通認識をつくらないと、組織運営のノウハウにはなりません。

何回も方針に立ち戻って、つまり何度もフィードバックを繰り返しながら業務を進めるので、とても労力がかかる非効率な仕事だと思われるかも知れませんが、一人ひとりが理解して計画を策定し、齟齬なく実行するための手順です。

状況の変化に即応できる組織作りの一過程として、チャレンジして欲しいものです。

以上