組織の能力を高めるためには、一人ひとりの隊員の能力やスキルを高め、組織内のチームワークを育成し、組織間の連携要領を効率化する。

陸上自衛隊では、個人の能力を高める訓練を「各個訓練」、組織の能力を高める訓練を「部隊訓練」と呼ぶ。

年間を通じて、各個訓練で隊員のスキルを向上し、小規模の部隊訓練から大規模な部隊訓練へとレベルを上げていく。

年間の訓練過程は、一般的な組織を作る過程そのままを絵にかいたようなものだと思う。

気をつけないといけないのは、部隊訓練は指揮官の訓練で、各個訓練とはまったく視点が異なってくることで、よくある間違いは、「部隊訓練で隊員を鍛える」と思い込んでいる指揮官が多いことだ。

部隊訓練は、次のような目的や意図をもって行う。

  • 訓練の準備~実施を通じ、指揮機関、幕僚の企画調整能力を確認する。
  • それまでの訓練の積み上げの計画が良かったかどうかを確認する。
  • 指揮官の意図がどこまで徹底できているのかを確認する。
  • 指揮官の意図と隊員の能力の整合が取れているかを確認する。
  • 部隊間の連携を確認する。
  • 隊員及び部隊の能力を把握する。
  • 教訓を得て、戦術・戦法を改善する。
  • 問題点を把握して、補備修正する。
  • 研究開発の資を得る。
  • 上級部隊に改善事項等を上申し、要望する。

隊員の行動すべてに、指揮官の訓練の企画能力や日頃の指導の結果が集約して現れる。

指揮官が、目的や任務に対する意識、明確な目標、評価基準を持っていなければ、部下や部隊を指導することはできない。訓練の成果を組織に効率的に反映するためには、訓練の成果を評価し、教訓を取り込むための準備がいる。スタッフがいるし、他部隊等との調整も必要になる。

指揮官は、常に自分が示したものが間違っていないかどうか、自分に問いかけ反芻する。

こうした目的や意図を示さず、部下の能力評価をしていたのでは、ただ隊員に汗をかかせるだけになってしまう。 

組織の能力は指揮官以上にはならないのだから、指揮官の能力が上がらなければ、訓練の価値はないに等しい。

これは一般の会社でも同じことがいえる。

場当たり的な指導では、個人を指導することはできても、組織を育てることはできない。

「組織を鍛える」というのは、(“鍛える”と言っている)「指揮官自身を鍛える」ことに他ならないのだ。

以上