何も起きていない日常においてすら、“ストレス社会”と言われる時代です。精神的な健康を維持できてない人が、困難に直面したときに、いつも通りに生活するのは大変難しいことでしょう。

災害時の精神的健康の維持は、問題が起きたときに考えればよいというものではありません。救援物資の供給を優先して、精神的な健全性の維持は、落ち着いてからゆっくり対処すればよい、というものでもありません。

救援活動の当初から、物心両面にわたってバランスよく配慮して行うことが必要です。

余談になりますが、メディアは、公的な救援活動や被災支援に対する要求を掻き立てて、被災者の不安感や不満を引き出すような反権力的な立場ではない、救援活動、復旧活動に対する信頼と希望を持たせて、被災者に安心感を与え、被災者を精神的に支える救援活動の重要な役割を担っています。

レジリエンス(強くてしなやかで折れない心)は、「逆境や困難、強いストレスに直面したとき適応する精神力と心理的プロセス」のことを言い、訓練によって高めることができるものです。

例えば、米陸軍では、レジリエンス・センターという訓練施設を設け、陸軍のバトルマインド・プログラムなど、さまざまなレジリエンス向上施策を用意しています。

これは、普段からトレーニングして、習慣づけることによって初めて効果があるもので、困難に直面したときにやろうとしてできるものではありません。

最近は、病気を考えるよりも、健康を作り、健康を維持増進することを考えることの大切さが、語られるようになってきました。同じように、精神的な健康を増進して“ストレス社会”に負けない強い心を養おうという声が聞かれるようになってきました。

昔は、“根性シリーズ”の物語にみられたように、ストレスに耐えるために、より強いストレスに耐えるトレーニングをすることが流行っていましたが、今は、論理的に考え、物事に対する考え方、身の処し方、考える手順などを学び、発想を転換することによって、ストレスに耐えるための技術を習慣づけるトレーニングをするようになっています。

社会的なインフラを強化して災害に備えるのと同様に、日頃から、精神の健康を維持して、ストレスに負けないレジリエンス、しなやかで折れない心を養うセルフケアの普及は、災害防止の重要な課題だと思います。