富士川は、3,000m級の山々に囲まれて、長野県・山梨県・静岡県を流れ、流域の約90%が急峻な山地で、日本三大急流の一つに数えられている。特に、富士宮市の釜口峡は、最も川幅が狭まった場所で、激しい濁流により独特な岩肌が作り出された雄大な渓谷で有名な観光地。

古くは、万葉集に「不尽河」と詠んだ歌があり、平安時代の更級日記に、「富士河は富士山より落ちたる水」との一節があるように、富士山から流れ出た水が集まって富士川になっていると思われていたらしい。

名古屋圏と東京圏を結ぶ東海道沿いの戦略的隘路は、鉄道では静岡県と神奈川県の県境になる丹沢山地付近と丹那トンネル、道路では酒匂川の渓谷付近と富士川になる。

酒匂川の渓谷の厳しさは、東名高速道を走れば理解できるし、富士川の橋梁修復がいかに困難かは、河岸の絶壁と川の礫石を見ればすぐに納得できる。しかも、迂回路は、大きく日本海側を回るか、山梨県から富士川沿いに通るしかない。

いずれにせよ富士川は、中京圏と東京圏を結ぶ最重要の交通上の要点です。

富士川には、海溝型地震と合わせてマグニチュード8程度の地震が発生する可能性のある富士川河口断層帯が走っていて、ズレの速度が非常に大きく、我が国の主な活断層の中で、今後30年の間に地震が発生する可能性が高いグループに属している。その速さは平均7m/千年だから、最低2mから最大10mの大きさのずれが生じると予測されている。

この断層帯は、駿河トラフの延長上にある想定東海地震の想定震源域の端に位置しているので(連動可能性の検討は不十分であるものの)、想定東海地震と同時に活動する可能性があるとのこと。

地図 https://www.navitime.co.jp/maps/poi?id=00007890

地震本部:富士川河口断層帯

富士川河口断層帯の長期評価の一部改訂について

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/43_fujikawa_2.pdf

この富士川の橋梁が落ちたときの影響を想定してみたい。

全国の貨物輸送の約半数が東名高速道と新東名高速道を利用しているから、日本国全体の経済活動のための物流がマヒしてしまう。

例えば、太平洋岸で津波が発生した場合。関東以北に所在する自衛隊の救援部隊が静岡に進出するのは半日~1日以上遅くなってしまい、補給線を維持するのも難しくなる。

民間車両に加えて、支援物資の輸送、救援活動に従事する緊急車両、自衛隊の数千台の車両が往復するようになる。

高速道路を維持管理する中部日本高速道路株式会社は、4車線化を進めるなど防災対策強化を図るとともに、緊急輸送路は24時間以内に復旧、7日以内に本復旧工事に着手できるよう、道路復旧能力を整備している。ちなみに、中部地震では19時間後、被害日本大震災では20時間後に緊急輸送路を確保できている。

しかし、富士川の橋梁を確保するのは、道路の復旧とは、また別問題だと言って良いだろう。

この戦略的な隘路を改善するため、物流確保の観点から、東名高速道の改良工事、新東名高速道の建設に真剣に取り組んでいるのが、国土交通省。

一つは、平成30年6月、国の物流基軸整備計画として、「未来投資戦略2018」が閣議決定され、太平洋側と日本海側の両ルートから、近畿圏、中京圏、首都圏の三都市圏をつなぐ物流のダブルネットワーク化を推進することとなった。

背景にあるのは、1979年の日本坂トンネルの火災事故、静岡県の由比地区の台風や高潮による通行止めの頻発による大規模な交通渋滞によって生じた社会的、経済的影響の大きさの教訓であり、想定されている東海地震への対策などがある。

もう一つは、東名高速道の整備で、第二東名と在来の東名道の拡幅工事など。

主として、輸送の安定性や効率性から国土強靱化(レジリエンス強化)が語られている。併せて、浜松サービスエリアにヘリポートが整備され、関係機関との協定が結ばれるなど、国土交通省が所掌するインフラ整備を中心に、国土安全保障上の意義を考慮して、幅広に、整備されている。

ただ、広大な地域の交通統制、物流統制、移動統制を誰が把握して、誰がどう優先順位を決めて、どう統制するのかなどは、緊急時の社会活動を統制、あるいは制限する話となると、現状、所掌する官庁は存在しない。

当時の被災状況、経済、社会情勢を総合的に判断し、陸海空の交通、物流全般を見て、政治的に資源配分、復旧の優先順位、交通統制などを判断しなくてはならない。

日本には、離島や海峡地域を含めて、このような交通上の隘路が諸所に存在していることを考えれば、これからの時代、NSC隷下の実働組織として米国の国土安全保障省のような組織を設け、平時からビッグデータを把握させておき、万が一の事態が発生した際には、陸海空の端末地や物流拠点の復旧を指揮統制する機能、物流等の戦略輸送管理、警備と交通を一元的に指揮統制する機能を持たせる必要があるのではないだろうか。

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