《毎回の標題は、私が岡野さんのエッセーに目を通して、感じたことを掲げさせていただいている。今回、感じたのは「感謝」。

もともと「感」は、さかのぼれば、神の意に感応する、神意を動かすという意味からきていて、心を動かす、感じさせる、ありがたく思うなどの意がある。

「謝」は、移り変わることを言い、去る、むくいる、礼を言う、の意。

合わせれば、神意を感じてありがたく思い、移り変わることに礼を述べてむくいる、ということか。実に奥が深い。 人間関係のなかにあって利害得失だけに反応し、軽々しく「感謝」を口にするのは、神意に反しているのかもしれない。先回に続いて、反省。反省。》

ラッタッタのブレーキが甘いので、と云うか、ブレーキシューが磨り減って危険なのです。車のブレーキで云えば、奥へ深く踏み込まないと効き始めないので、神宮前の、近藤サイクルさんのところへ行きました。

このラッタッタは、今から35年前にこちらで購入したのです。私が33歳で、近藤さんは50歳くらいでしたから今は、85歳くらいです。ずーっと現役で、話しているときには手が震えているので大丈夫かと心配していると、工具を持つと、あら不思議。ピタッと止まるのです。

そうだよな。60年以上、仕事をなさっておいでだから、元気で続けられるんだ、近藤サイクルと云うのだから前は自転車屋さんをなさっていたのでは、近藤さんみたいに元気で働くお年寄りをもっと推奨すれば、医療費も減るのになぁ、などと思いながら、世間話をしているときに気付きました。あれ、こんな大きな建物がここにあったっけ、と。それで近藤さんに「ずいぶん大きな物が建っていたんですね。確か、あそこは都営住宅で、国立競技場の隣ですよね」。

すると、ビックリする返事が。「1番上は、22億円だそうですよ。22億、この辺じゃ一時、その話で持ちきりでしたよ。最上階は、3部屋だけだそうです。22億のね」。正直、頭の中に22億は直ぐに入りませんでした。私の知っているマンションや一戸建ては、4~5000万円から、~1億5000万円です。ときどき芸能人の3億円の豪邸などとテレビから聞こえてくることはあっても22億は。で、私が云えたのは、「いったい誰が買うんでしょう。22億ですか~」だけでした。でも存在するのですね、本当に。国、いや都か、よく分かりませんが、いったい何を考えているのでしょう。

オートバイに本格的に乗り始めた33年前、オートバイ雑誌で見たBOSS HOSS(ボス ホス)シボレーのV8エンジン5200ccを乗せたオートバイを見た時よりも、すごい衝撃でした。その頃の日本のオートバイで1番大きかったのは、本田のゴールドウィング1500ccだったと思います。

そんなことを思いながら店に帰ると、しばらくして電話が鳴り、出ると、先ほどまでお伺いしていた近藤サイクルさんでした。電話の内容は、私が、何か財布のような物を落としていきませんでしたか?とのお知らせ電話でした。有り難いことです。わざわざ時間を見計らっての電話。私のものではない旨をお知らせして、御礼を言って電話を切り、受話器を置きながら、私はいつも皆様方に助けられてここまで来たんだと、改めて思いました。

最後に勤めていたシベルタのオーナー、リシャール氏からは、お客様をパリから送っていただいたり、オートバイで飛んで、店を3ヶ月休んだときは、お客様の息子さんが手伝いに来てくれたりしました。店の前の立ち退きして新しいマンションを作っているときは、お客様が3~4回、店を見に行かれて、進行状況を知らせてくれました。店の内装を作っていただいた根本工務店の根本社長様には、引っ越しから、大変機能的な調理場の制作、墓前での報告、3代目のケアーまで、お世話になっております。本当にありがとうございます。 たぶん、こうやって皆さまの力をお借りして、このコロナ禍も乗り切って、楽しい明日を迎えます。あの35年物のラッタッタと。

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