1 人の学びはマイナス感情から始まる

「楽あれば苦あり」と言うように人間の感情は、「苦あるがゆえに楽あり」なのです。

人間は物事を悪くとらえる性癖がある、心配からしか学べない、劣等感は人生のバネになる、というのは人間の本質的なものの感じ方です。

人はこの世に生を受けた以降、マイナス感情からスタートして、さまざまな感情を身につけていきます。不快から快が生まれ、怒り、嫌悪、恐怖の感情から得意、愛情が芽生えてきます。愛情に対する嫉妬が生じ、喜びの感情に分化していきます。

情報分化の様相(ブリッジェス、1932)

(『アサーション・トレーニング 自分も相手も大切にする自己表現』平木典子編、至文堂から)

この子供の感情分化の様相を見ると、人はまずマイナス感情から感じる、あるいはマイナス感情を強く感じるというのが、極めて自然なことだと分かります。感情をどう受け止めるのかは、すべての人に与えられている課題なのです。

人は、何も考えずに起こった出来事を受け入れたとき、過去にすり込まれた無意識の記憶や固定観念や思考のクセによって生まれる、怒り、悲しみ、羞恥心、罪悪感、不安などのマイナス感情に引きずられてしまいます。

しかし、「大変なことになったと思ったが、冷静に考えたら大したことではなかった」とか、「よく考えたら、すごく良いチャンスだった」ということがあるように、出来事を受け止めて「考える」という手順を踏むことによって、マイナス感情を取り払い、プラス思考に結びつけることができます。

そういう思考する習慣を意識して創り出せば良いのです。

そうすると、「意志」の力が働いて、感情をコントロールできるようになります。

そのとき、どのような方向に流されやすいか、自分の「思考のクセ」を知っていれば、より冷静に考えることができます。また、思考の焦点を目標に集中することで、マイナス感情に左右されず、論理的に思考することができます。

マイナス感情からプラス感情が生まれるのが人間の情緒発達の自然の理なのですから、マイナス感情は、プラス思考をする大きなチャンスを与えてくれていると考えられるのです。