《いつの時代もヒーローがいて、ヒーローには共通していることがあります。

まず、明るい。陰気なヒーローや暗いヒーローは、見たことがないでしょう。

小柄な人も、非力な人もいるけれど、常に前に進もうとします。

そして必ず、やられたり、失敗したり、苦境に陥ったりすることがあって、弱音を吐くことも落ち込むこともあるのですが、立ち直るのが早くて、また困難に立ち向かって目標に向かいます。

決して完璧ではありません。完璧だと、たぶんつまらない奴になってしまいます。欠点はあっても、周囲の人たちに好かれ、皆から希望や勇気を与えてもらい、また与えます。そして、優しくなければヒーローにはなれない、というのもとても大事なことです。 そんな生き方をしたいという願望がヒーローを生み出し、多くの人たちの生きる意欲を沸き立たせてくれるのでしょう。(A.Y)》

先日、あるお客様とのお話のなかで二人が一致したことがありました。

それは家庭の平和のためテレビ権は放棄する、でした。と云うよりも、仕事の関係上見られる時間帯が限られる、というのが二人の意見でした。

ただ私は恵まれています。個人事業者なので、朝の仕事時間、そして午後の休み時間もラジオを聞けるので、社会で何が起きているのかについて行けるのです。

番組は、文化放送を聞いています。

映像がない分だけ、番組の出演者の方々が楽しそうに仕事をしているのが手に取るように分かるのです。内容もゲストの方々もさまざまで、今朝のゲストは、何とあの力道山の奥様でした。大変楽しいお話しでした。それで、この書き出しになったわけです。

その理由は、私の父、龍圡軒三代目の武勇(ブユウと書いて、タケオと読みます)にさかのぼります。武勇が生まれ、役所に出生届を出しに行ったときには武男だったのですが、役所の人が、「何か間が抜けている」と、男のうえにマを付けて勇をオと読ませ、「この方が男らしく勇ましいからいいだろう」と言われたのでそのままにしたと、私の祖母トモ、武勇の母親が話してくれました。

何とまあ、大らかな時代だったのかもしれません。 

この武勇が唯一自慢していた話が、あの力道山と一緒にいた、ということでした。

暮れのあるとき、店の電話のベルが鳴りました。赤坂税務署の署長から、直々の電話で、何日の何時に署長室に来て欲しい、ということでした。父は、まさか脱税していると思われているのではないかと思ったそうですが、まぁそんなことはないので安心して署に出向いたそうです。

署長室に案内されてびっくりしたのは、何と力道山が署長のデスクに半分腰をかけて話をしていたそうです。何人か、この地区の主だった店主の方々がいたので目で挨拶して、話を聞いていると、力道山が「なぁ、署長さん。この人たちはちゃんと真面目に商売しているんだから早いところ帰してやれよ」と、呼び出されたことに不満の様子で、軽く署長さんに詰め寄っていたのでした。

日本全体が右肩上がりの時代で、これから12月に入り、忘年会やクリスマスパーティーなどが押している時期でした。

父は、とくに何かあったわけではなく「これから忙しくなるのでよろしくお願いします。赤坂税務署は気にかけています」ということだった、と云っておりましたが、そんなことはどうでも良いことで、彼の人生では力道山を目の前で見たことが、一大事件だった訳です。

商売柄、有名人や芸能人、そして皇室の方々にもお会いさせていただいているのに、言葉を一言も交わさなかった力道山さんの方が印象深かったのです。

ただのone of them だったのに。

父は力道山さんの「この人たちは真面目に商売しているんだから早いところ帰してやれよ」が余程、気に入ったようでした。

私にとっては、力道山さんは、小学生時代の空手チョップ、月光仮面、少年ジェッター、エイトマンのようにテレビのなかのヒーローで、特に印象深かったのは白黒テレビのなかのあの黒いタイツでした。他の人たちは皆、黒いパンツだったのに、やはりヒーローは違ったのでしょう。

今朝のラジオで、キャストの野村邦丸さんが力道山の奥様に「テレビを日本全国に普及させたのは力道山さんですから」と云っていました。

たしかにその通りで、家内にその話をすると「そうよ。私も覚えているわ。あの街角テレビの光景。あの小さなテレビを何百人もが取り囲んで、見えていたのかしら。本当に。そうよ、力道山のおかげよ、テレビは。そうそう皇太子さんの結婚でカラーテレビが普及したのよ」。

四谷育ちの家内は「皇太子さんのパレードが四谷を曲がって行ったのよ」でした。

あの時代は、今日より明日、そして明後日と、より良くなっていった時代で、希望に満ちていた時代だったと思います。

このコロナも乗り越えて、同じような時代を作っていきたいと思います。

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