《今回の話は、どこにでもある、誰もが考えさせられる、身近な課題です。

現代のロビンソン・クルーソーは、どのような生き方を選択するか。

コロナ対策に夢中になって、本来の人間らしい生活を後回しにしてしまう現代人ならば、目の前の食うことに囚われてしまって、島を抜け出すことを忘れてしまうかもしれません。

私が子供の頃は、よく「人の好意に甘えてはいけない」「好意の押し売りは人を駄目にしてしまう」というように、するにしてもされるにしても「好意」というものに対する用心深さが説かれていました。

日常のなかで、人間の心理の奥深くを読み解く、教えが伝えられていました。ところが今は、好意が絶対的な善いことであるかのように言わなければならないと思い込まされているフシがあります。

好意に甘えずに自力で生きることを良しとしてきた四国の山村に住むお母さんの生き方は、どうなってしまったのだろうか、と考えてしまいます。(A.Y)》

大変失礼をいたしました。

今朝、恒例の歯の移動をしていただいている歯医者さんでワクチンの話になりました。それで、前回に書いた港区の高齢者の方々の人数が6,500人だと話すと「それはおかしいよ。岡野さん」でした。そして「それはこの地域の話じゃないの」。

その瞬間、我に返りました。

どう考えても私と同じような年齢の人が港区区内に6,500人しかいないのはおかしい。何で気がつかなかったんだろうと、本当に恥じ入りました。

そして、こんなことも。

「岡野さん9時は早いよ。だって受付カードには9時30分て書いてあるでしょ。まっいいや。座ってください。年寄りは早い。だから!さあ、どうぞ」でした。

お詫びを申し上げて座りましたが、心のなかはショックでした。時間のことではなく、初めて人様からお年寄りと認識されて、言葉として聞いたことです。

確かに身体の衰えは感じており、階段も必ず2~3歩先を見て降りていますし、オートバイの運転も前以上に慎重になり、車間距離も広く取っております。しかし、私の年齢を知っている先生にも、見た目以上に私が年寄りとして写っているのでしょう。だから前のように「年寄りは」が出てきたんだと思います。

これは自分でも分かっていたことです。ここ数日前の朝、顔を洗っているときにこれからは少しこだわりを持ってオシャレをしなければと、思うようになりました。ただ世の中の変化が早いのと、私たち、昭和世代の者の価値観と現代の価値観との違いと云ってもよいのかもしれませんが、少し違うように思います。

で、価値って一体何なんだとときどき、いや、よく考えます。人それぞれに自分の価値観を持っていると云いますが、10人いれば10通りの、100人いれば100通りの、それぞれ違う価値観があるわけです。するとこの100通りの価値観がぶつかり合わないように、すなわち揉め事が起こらないように、自然と100人での約束ができあがっていくようです。面白いのは、自然界の動きは皆そのようになっているのです。

今、読ませて頂いている本、放送大学教授の谷口義明先生の『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』です。これが面白く、前に書かせて頂いたヨットレースの話“ヴァンデグローブ”の無風から風が興るように、当たり前のように説明して頂いている本なのです。ブラックホールは、穴ではないのです。この話はまた、別のときと云うよりも、谷口先生のご本を読まれると本当によく分かります。

それで、じゃあ1人しかいなければどうなんだ、ということにあるわけですが、それでも1人で生きていくために重要なのは、何か、1人のときの価値観を持つことなのだと思います。

先日、いつものラジオの文化放送で、大変面白い方がゲストで出ていらっしゃいました。この方はあの有名な小説『ロビンソン・クルーソー漂流記』のモデルでスコットランド人船乗りのアレクサンダー・セルカールが4年4ヶ月漂流していた島に行って住居を見つけた、との話でした。

私にとっては、初耳の話。

このセルカール氏が生きるためには、水、食糧はもちろん必要ですが、島から脱出するためには救出してもらう船をいち早く発見できる場所が一番重要で、自分の存在をその船に伝えて救出してもらうことだと話されていました。

ごもっとも。人それぞれ、そのときの状態により、重要なものが変わっていきますが。

先日、中国での少数民族の方々への貧困対策の番組を見たときに、あれ、これは前にも見た話だと思いました。

それは、かれこれ25~6年ほど前に、四国の山村に住んでいるお母さんの話で、そのときにお母さんが発した一言でした。

このお母さんの娘さんが、お母さんが大変だからと云って行政を動かして電気を引いてもらい、洗濯機をプレゼントしたときのルポルタージュでした。

お母さんの一言は、「ありがとう」ではなかったのです。

その一言とは「これで、お金がないと生きていけなくなった」でした。

そう、それまでは食糧も燃料も自給自足で生活なさっていたのです。いや、それができていたのです。私もそれに似たような生活をしたいと思っていますが、自分にはその知恵も無く、まして技量もありまえん。自分をごまかして生きています。

フランスにいるときに、私の師匠のヨットの師匠ポルチエ氏はMeilleur Ouvrier de France de Sommelierメイユール・ウヴリエ・ドゥ・フランス・ドゥソムリエ 4年に1回フランスの最優秀ソムリエで2つ星のオーナーですが、ほぼ6~7割を自給自足で補い、店は年に3ヶ月だけ開けておられ、残りの9ヶ月は畑作りやブドウ栽培からのワイン造り、そして楽しみのヨットでした。

そして、No20に出てきたボーイのディディエの奥さんジゼルの実家はモナコです。そのジゼルのお父様はモナコから30km離れたイタリア国境のすぐ傍の村、ソスペルに別荘をご自分で建てられました。15年かけて。それは立派な別荘でした。電気、水道もご自分で。ガスはプロパンガスでしたが、ここばかりは危ないのでプロに頼んだとおっしゃっていました。

このソスペルはディディエの生まれ故郷で、友人がやはり1人でバンガローを作っていました。私たちもコンクリート用の砂を、20mほど坂を下って運びました。小さな砂山でしたが大変でした。1トンありました。

学生時代の友人、コムデギャルソンのキヨの彼氏は、西麻布の店にも遊びに来てくれました。彼は、1,800年初頭に建てられたホテルレストランをこつこつとレストアーして料理を作っております。キヨは、土日はレストランを手伝っていると云っておりました。私も見習いのときに、調理場のタイルを貼りました。

そうそう、忘れていましたが、リッツにいるときに借りていたステューディオの部屋の壁紙を貼り替えました。地中海に行くため、部屋を出るときに来られた大家さんがびっくりし、部屋が明るく綺麗になったと云って、掛かった費用を全部出してくれました。

四国のお母さんやポルチエ氏、ジゼルのお父様、ディディエの友人、キヨの彼氏も今の時代の風潮、お金があるから幸福、とは別の場所にいると思います。お金は大事ですが、お金がすべてでは無いと思います。今の世の中、どんどんお金中心の世の中になっていき、建物もお金を使わないと自分お部屋にも入れない、それは自動ドアやエレベーター。(コロナには関係なく)モノ作りが、どんどんお金がかかるように変化しています。

お金がないから貧困ではなく、社会の制度が貧困だから、貧困になる人たちが増えているのです。お金を沢山持っている人たちにも心が貧困な奴をときどき見かけます。

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