1 呼吸

私たちの呼吸は、1回(=1回換気量)で500ml入りペットボトル1本分の呼気・吸気が出入りしていて、気道を通って肺に入った空気は、肺胞に到達し、肺胞を取り囲む毛細血管を通じて新鮮な酸素が渡され、代わりに二酸化炭素と交換されて呼気として外へ出ます。

近年、この腹筋の収縮を意識して行うリズム運動としての“呼吸”という機能が、自律神経と連動して、メンタルヘルスに好影響を及ぼしていることが医学的研究によって分かってきました。

呼吸は、私たちの心模様を反映しています。

不安、悲しみ、怒り、焦り、恐怖などのネガティブな感情になったときには、「浅くて速い」不安定な呼吸になり、喜び幸せ、癒やし、安心などのポジティブな感情になったときには、「深くてゆったりとした」安定した呼吸になる、というメカニズムになっています。

つまり、不安定な感情が不安定な呼吸を招き、安定した感情が安定した呼吸を招きます。逆もまた当てはまり、不安定な呼吸をしていると感情も不安定になってきますし、安定した呼吸をしていれば感情も安定してきます。

呼吸には大別すると「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があり、それぞれ脳の異なる部位の働きに関係しています。

前者は、肺いっぱいに息を吸い、横隔膜の上げ下げを意識してお腹を膨らますイメージで行う方法で、無意識に、恒常的に行われている代謝性呼吸と呼ばれるもので、生命機能の維持やコントロールを司る脳幹に関係します。

後者は、意識して行う呼吸方法で、随意呼吸と呼ばれ、フラットな状態から息を吐くことから始めます。吐いてはいて、もうこれ以上吐けないというところまで吐くと、吸気は自然に行われます。座禅でもヨガでも太極拳でも、リズム運動に用いられている呼吸法は、すべてこの「吐くこと」を意識して行う腹式呼吸で、リラクゼーションに効果があるとされています。

こちらは、思考や意志、判断など、人間らしい能力を司る中枢であり、運動や感覚の中枢でもある大脳皮質に関係しています。

今、多くの企業で、ストレスマネジメントの一つとして腹式呼吸を意識した呼吸法が、取り入れられるようになってきました。

2 腹式呼吸

まず、リラクゼーションを目的とした「腹式呼吸」を取り上げます。

① まず、へその下に軽く手を置きます。人差し指から小指までの四本の指がちょうど終わるあたり(ツボの世界では「臍下丹田(せいかたんでん)」とも「丹田」とも言われます。)になんとなくエネルギーがたまるイメージを持ちます。

② 次に、体の中にたまっている息を全て外に吐き出すイメージで口からゆっくりと、細く長く吐き出します。みぞおちを落とし、吐く息と同時に、上半身をやや前掲してお腹が縮んでいく「落とし・曲げ」イメージを持ってください。横隔膜が上がります。

③ 吐き出しきったら、今度は鼻から、新鮮な空気を体内に取り入れるといったイメージで息をスウっと入れると同時に、上半身を伸ばして、お腹が膨らむ「起こし・伸ばし」イメージを持つことで横隔膜が下がります。

④ この呼吸を繰り返します。大切なことは、「吐く」息に特にイメージを持って、細く長く吐き出すように続けることです。

⑤ 最初は2~3分程度。なじんできたら、適宜自身の好きな時間で取り組むことをお勧めします。

こうした呼吸法を続けることで、パニック障害を患っている方々の症状の軽減につながった、あるいは軽度のうつ病を患った方々の症状の軽減につながったという報告、医学的エビデンスがあります。

また、この呼吸法を続けることで、次のような効果があるとされています。

  • 酸素の交換効率が向上することで、頭がすっきりし、気分改善・向上につながる。
  • 吐く息のコントロールがうまくなるにつれて、副交感神経の働きが活性化され、気分が落ち着き、リラックスする能力が向上する。
  • 腹式呼吸を継続的に行うことで、横隔膜がスムーズに下がり、内臓に適度な圧力がかかるため内臓の血流促進に好影響がある。