《私が、「職人」と言う言葉の意味合いが理解できるようになったのは、40歳近くなってからでしょうか。子供の頃から、職人というものの存在に気がつきませんでしたし、小説などから、個人で働く大工やさまざまなモノ作りに携わる頑固親父、一徹者、そんなイメージしか持っていませんでした。

昔は、「職人vs.管理者」のように思っていましたが、この「職人」という言葉、実に奥が深く、真のプロを意味しているように思えるようになってきたから不思議。その道を究めた人の話は実に面白く、何時間、話を聞いていても飽きません。最新の技術から、職の技能から、人間そのものまでが詰まっていて、チームで仕事をしていることを知ると、味があって、万事に通じるように思えてきます。

私は「管理者/指揮官」であることを仕事としてきましたが、最近は、小賢しい「管理人」が多くなってきて、真のプロの「職人」のような管理者がいなくなってきたような気がしています。  何時の時代も同じなのかも知れませんが。(A.Y)》

私が料理の世界に入ったのが、1970年の9月、今日は2021年の1月で、かれこれ50年が過ぎようとしています。

私たち職人の世界ではまだ中堅を脱したくらいで、私の前の世代の方々は、尋常小学校(10歳)出の方もおいでで、それこそ60年、70年の方々も多くいらっしゃいました。私の祖父の時代ですが、またそういう職人の方々が多い時代だったのでしょう。

私は、職人という言葉が大好きです。反対に嫌いな言葉ではシェフです。

敢えて言います。頭の悪い奴らが料理人を指してシェフと言っているのを聞くと虫酸が走る。後ろから行ってポンと頭を叩いてやりたいです。

意味も解らずに使っているからシェフ(フランス語Chef)、英語のチーフで、日本語に直せば頭(かしら)、長、首領で、職種を云っているわけではないのです。

料理人のシェフ、調理師のシェフ、もっとフランス料理のシェフならば良いのですが。

近頃、やたらとカタカナ語を使用する人が多く、その人達は、その言葉の本当の意味を分かって使っているのでしょうか。ただ、皆が云うから概念で使っているのか、また具体的に云うと物事が限定してしまうのが怖いのか、どちらか。

で、昨日、さんざん家内にバカにされて、大笑いされました。

休日のほぼ日課になっている散歩をして、渋谷の東急ハンズに歩いて行きました。西麻布の裏道をできるだけ人に会わないように根津美術館へ。さらに裏道を通って、表参道にあるZARAの家庭用品売場へシーツを見に行きたいというので、濡れ落ち葉のようについていくと、私道から青山通りに出る左側に、大変に洒落たアクセサリーの店のウインドーが目につきました。

ZARAは家内について来た男性が5~6人。

私が見てもあまり興味もない枕や枕カバー、シーツやタオル、デザインされた食器、コップなど、若い女性が好みそうなものが沢山。

私に云わせれば、前に書いたシェフのようなものばかりで、デザインされたものはある一点については良いのですが、他用しづらいので、私の店では単純な白の則武の食器と手吹きのワイングラスです。もう41年つかっておりますが、良いものなのでデザイン変更もなく、今でも作っているので、補充も効きます。

たた、こちらで大変感心したのが、洋服のハンガーです。それも普通のハンガーではなく、小さい子用のハンガーで、久しぶりに可愛いなと思いました。大人用のサイズを3~4歳用に縮小してあり、なまいきにもズボンを挟んで吊すのもちゃんと付いているのです。一瞬、飾りとして店に置いてもいいかなと、久しぶりに指食が動きました。

以前、可愛い物に出会ったのが、今から40年ほど前。

母から「利男、ちょっとこっちに来て」と出張先の東京タワーの下の聖アンドレ教会で呼ばれました。ここには結婚式の披露宴の料理作りに来たわけです。

母に付いていくとそこはトイレ。そこには、小さな洋式便器と小便器が、たしか6台ずつあったように覚えています。本当に可愛いのです。そう、聖アンドレ教会では、幼稚園を運営なさっていたのです。

母と顔を見合わせたのを良く覚えております。

ようやく女性の城から解放され、ZARAから出て、本来の目的のハンズに行くために渋谷方面に歩き始めると、先ほどのアクセサリー店の前を通るときに、なかなかの雰囲気で、店のドアーに崩したローマ字でageteアゲテと読めました。

家内の方を見て「なかなか良い名前じゃない」と云うと、家内が「なんで」と問い返してきました。そこで「だって、アゲテだぜ」と云うと、大爆笑で「やだ~、アガタでしょ。アガタ」と云うじゃありませんか。でもどう見てもあの字はeで、aではないと云っても、「アガタよ。アガタ。そう、アガタよ」。

ウー(ココの母親の通称。由美のウが伸びて、7~8歳の頃からウーと呼ばれていたそうです)が大学生の頃に、大変に流行ったフランスのパリのアクセサリーメーカーだったそうです。

その日はもちろん、今日で三日目になるのに、私の顔を見ては「アゲテね。面白いわ。新年1番のアゲテね」と、人をからかうのです。

しょうがない。だって、どう見てもAgeteで、Agataとは見えないので。ネットで調べてみると、Agathaと書いてあった。おい、Hはどこへ行ったんだと。

来週の日曜日にもう一度行って、悔しいので、たしかめて、アゲテ解決してやる。

https://www.saibouken.or.jp/archives/4271