Q1 まず、災害に関わる神奈川県全般の地勢、災害の特性について、教えてください。

A1 神奈川県は、境川以東の東部丘陵地帯(多摩丘陵、三浦半島)、境川と相模川に挟まれた中央部低地帯(相模平野)、相模川以西の西部山地帯(丹沢、箱根火山)に、大きく三つの地域に区分されます。

予想される災害の様相は、地域の特性によって大きく異なっています。

活断層による直下型の地震もありますし、平野部は風水害、山間部は土砂災害、相模湾に面した地域は津波災害が予想されています。

Q2 神奈川県は、ちょうど大陸プレートのつなぎ目に位置していたと思いますが、地震については、どのように想定されているのですか?

A2 西部山地帯には、国府津-松田断層帯と呼ばれる非常に活発な活断層があります。

これを山北町の神縄断層に延長した神縄・国府津-松田断層帯は、相模湾底の相模トラフに続き、1703年の(元禄16年)の元禄大地震や1923年(大正12年)の関東大震災などの震源となったもので、これは東日本を載せる北米プレートと伊豆半島を載せるフィリピン海プレートの境界になります。

丹沢山地は、フィリピン海プレートに載って南から移動してきた伊豆半島が本州に衝突することで隆起して形成された山地で、大磯丘陵は神縄・国府津-松田断層帯の活発な活動の蓄積によって隆起した丘陵だと言われています。

横須賀市南部の三浦半島には、浦賀水道を挟んで房総半島まで続いている活断層、衣笠断層、北武(きたたけ)断層、武山(たけやま)断層などが並行して走っています。

東部地域と西部地域の成り立ちが異なるので、東部地域の地震と西部地域の地震が連動して起こることはないと考えています。

また、箱根火山は、二重の外輪山を持つ大規模な複式火山であり、現在も活発に活動しています。

このように、神奈川県は、地域毎に災害の特性が大きく異なっています。

Q3 市町村を支援する広域自治体としての、県の防災システムについて、教えてください。

A3 災害が発生した場合、県庁に災害対策本部を置き、災害の状況に応じて、地域県政総合センター(県央、湘南、横須賀三浦、県西)に現地対策本部を開設して、対処します。

Q4 危機管理要員の配置などは、どのようになっていますか?

A4 各地域県政総合センター事務所に約5名の要員が配置されています。

情報は、災害情報管理システムによって共有できるようにしています。

危機管理部門の要員と、現業で24時間の管理体制が必要な土木部門等の要員は、当直体制をとっています。災害対策本部の幹部要員は、交代で、指定されたホテルに待機態勢をとれるようになっています。

Q5 危機管理要員の訓練、また市町村との連携は、どのようになさっているのでしょうか?

A5 全員が参加する訓練、一部が参加する訓練、テレワークで実施する訓練など、工夫しながらやっています。

市町村との連携は大きな課題ですので、ワークショップ形式などで、担当要員の連携を図っています。特に、県と市町村の担当者間で、共通認識を持たせることが重要だと考えています。

Q6 政令指定都市とその他の市町村との規模や組織・システムが異なるので、連携が難しいのではないかと思いますが、いかがですか?

A6 神奈川県は、100万人以上の政令指定都市が横浜市と川崎市、相模原市も政令指定都市になっていますが、規模も組織もかなり異なっていますし、独自の考えで対策をとろうとしますので、連携が難しいと感じています。

Q7 神奈川県は、西部の交通路が制限されていて、安定的な補給路確保が制約されていますが、何か独自の対策は考えているのでしょうか?

国交省が力を入れて交通路の強靱化を図っているので大丈夫なのだろうとは思いますが。

A7 国の施策にお任せしていて、心配していません。

西部地域と東部地域で同時に、大規模な災害が起こることは想定されていないことも幸いです。

厚木基地を利用した輸送端末地も整備されていますので大丈夫だと思います。

【後記】

神奈川県は、北米プレートとフィリピン海プレートが押し合う、地勢上とても特徴的な位置にあり、東部丘陵地帯、中央部低地帯、西部山地帯で、自然災害の起こる要因と様相が、大きく異なります。

加えて、箱根火山と、その向こう側には富士山があります。

1703年の(元禄16年)の元禄大地震や1923年(大正12年)の関東大震災などの震源は、西部山地帯の神縄・国府津-松田断層帯。これは、ちょうど、東日本を載せる北米プレートと伊豆半島を載せるフィリピン海プレートの境界になり、相模湾底の相模トラフに続きます。

上記特性に応じた地域毎の防災施策と市町村の連携。

特性の異なる3つの政令指定都市を含む大都市圏から過疎地まで、多様な市町村を束ねる広域自治体としての防災システムの在り方。

首都圏の一部としての防災施策。

首都圏と東海~関西圏をつなぐ要域として、防災行政上、国レベルから基礎自治体レベルまでの行政の連携と防災施策の連携要領。

どれをとっても、難しい課題を抱える、非常に興味深い県(市町村を支援する広域自治体)になります。