《丁度、私が高校生の頃、ボブ・ディランもシャンソンも、流行っていて、ラジオの深夜放送で聞いたりしていました。

それ以来、ほとんど聞いたことがなかったので、その名前を聞くと、音楽よりも、その頃の思い出の方がよみがえってきます。

歌は世に連れ、世は歌に連れ。

私が、幹部候補私学校の区隊長をしているとき、昭和60年(1985年)だったと思うのですが、旧軍の将校の方々の数百人の集まりに出たことがありました。その会合の最後に、皆で歌を歌ったのですが、軍歌に始まり、それぞれの将校の出身に関わる歌、士官学校はもちろん、飛行兵、旧制高校の寮歌など次々に出てできて、延々とお互いの出身に関わる歌を肩を組んで大声で歌うのです。それぞれの出身に関わる歌が忘れられたり、漏れたりしないように、次から次へと、あれもこれもと出してくるのです。

そのとき、歌の合間の、隣で一緒に肩を組んだご老人の誇らしげな一言がすごく印象に残りました。

「君たち自衛隊の幹部には、皆が一緒に歌える歌がないだろう?オレ達には、出身が違っていても、こうやって、一緒に歌える歌があるんだよ」。

「全部、歌い終わったようですから・・」という司会で、お開きになりました。(A.Y)》

朝、寝起きに家内がつけたテレビから流れてきた音楽。それがシャンソンだったのです。洗面後に薬を飲むためにコップに手を伸ばしながら、「今、パリに行ったって、シャンソンなんて誰も歌ってないよ」。これ本当です。そして、追い打ちを掛けるように「70年にパリに着いたときに、いわゆるシャンソニエ(観光客にシャンソンを聴かせるところ)は、モンマルトルの丘に3軒しかなかったんだから」と云った自分に、朝から何て嫌みなことを云うんだろうと思いました。

そのときに、これは書いた方が良いと思い、今、書いています。

日本人が、と云うよりも、日本でのフランスをイメージさせるときに必ず出てくるのが、アコーディオンのシャンソン、赤ワイン、エッフェル塔です。イギリスだと、エリザベス女王、ウイスキー。ドイツだと、ビール、ソーセージ、ベンツ。イタリアでは、オードリー・ヘップバーン、バチカン、フェラーリ。さて日本は、前はサムライ、ゲイシャ、フジヤマ。今なら、トトロ、千と千尋の神隠し、悲しいかな女性蔑視でしょう。

それほどイメージというのは強烈で、実際とはかけ離れてしまいます。

まして、その土地に住んでみると、日本国内でも、旅行とは違うことがよく分かります。これは国や地方に限ったことではありません。

このシャンソンという言葉も、前に書いたレストランと同じように、あまりにも身近な言葉なので、本当のところはよく知らないのです。そこで調べてみました。

水野明治先生のスタンダード佛和辭典で。

Chanson n.s. ①(a)小唄、シャンソン。L’air ne Sait pas lu chanson.(諺)表面だけなく内容を見なければならぬ。Voila bien une autre chanson.それはまったく別の問題だ。(b)歌。chanson a boire 酒歌。(c)(小川、風などの)快い音。②諷刺小唄(=chanson satirigue)、mettre en chanson=chansonnere、諷刺小唄で諷刺する。③決まり文句。C’est taujours la meme chanson.いつもと同じことだ。④武勲詩(=chanson de geste)⑤pl 他愛ない話、ばかげたこと。Chanson(que tous cela !)(そんなことはみんな)ばかげた話だ。です。

ここからくる言葉のイメージで「はっ」とさせられたのが、「歌」というイメージがあまり強くないのです。そう。皆さんが持っておられたシャンソンのイメージの方が正しいのです。私は、てっきり「歌」としてとらえていました。皆さんが持っておられる1950年代のエデットゥ・ピアフやパリの下町を舞台にした白黒のジャン・ギャバンの映画のイメージの方が正しいという云い方は変ですが、それがシャンソンなのです。

ちなみにその辭典のchansonの下に4つの言葉、そしてchant歌があります。

☆chansonner 1 v.tシャンソンで諷刺する。2 v.i 諷刺小唄を作る。

☆chansonnette n.s ①(a)優しい小唄(シャンソン)(b)(方)(俗)親切な尋問②(くだけたフランス語の台詞入りの)しゃれ小唄。diseur(diseuse) de chansonnette滑稽芸人。

☆chansonneuz n.m諷刺小唄作者。

☆chansonnier (eze) 1 n.①小唄(シャンソン)作者。②自作の小唄(シャンソン)をcabrets artistique(芸術キャバレー)で歌う芸術家2 n.m小唄(シャンソン)集。

☆chant n.m ①(a)歌、唱歌。Maitre de chant 歌の先生。(b)鳴き声、さえずりchant du cog 1)1鶏鳴 2)百日ぜきのせき。au(premier) chant du cog一番鶏の鳴く時刻。/chant du cygne白鳥の歌、最後の作品。②(a)chant曲。(b)歌詞。③(a)chant de noelクリスマス頌歌。/plain chan平調歌曲④(長唄の)篇⑤pl(a)調子、曲。(b)叙事詩。

イメージのよる思い込みは、私たちの生活のなかに深く関わっていますが、実際に見てみたり、触れたり、聞いたりすることで、新たに分かることがあると思います。このコロナ禍で、テレワークだったり、バーチャルだったりで、人との接点が少なくなっていますが、早くこのコロナが治まり、楽しい時間が来ることを願っております。

本当に蛇足ですが。

私が料理を作っているときに、調子が良いと鼻歌で、“パリの空の下で”というシャンソンを歌い、家内は仕事が終わり、エレベーターで2階に上がるときに必ず、1964年の東京オリンピック行進曲を知らずに口ずさんでいます。 家内に聞くと、自分を奮い立たせるようだと云っております。

https://www.saibouken.or.jp/archives/4288