中共は、尖閣諸島において、武力行使ではなく、日本が反応できない状況や反応しない心理状況をつくるための「グレーゾーン戦術」と呼ばれる違法行為を繰り返していますが、それを「グレーゾーン戦術」と呼ばせること自体、中共の狙いとするところです。
なぜなら、尖閣諸島は、歴史的に見て、明確に日本の領土であり、まったくグレーゾーンではないからです。

1. 中共の目的
中共は、尖閣諸島への領域侵犯の既成事実を積み重ね、あたかも自国の領域であるように振る舞い、宣伝します。軍事行動と平時活動の中間領域で、法的曖昧性と心理的圧力を利用した行動をとり、相手の反応を鈍らせ、既成事実を積み、二国間のグレーゾーンであるかのように振る舞い、国際的な認知を得ること目的としています。
ギリギリで国際法に触れず、戦争の一歩手前で止まる、高度に計算された方策を組み合わせて戦術としています。
2. 中共の戦術
① 公船の領海侵入の常態化
中共海警が年中無休(年間350日以上)で領海への侵入を繰り返すと、日本に「今日も侵入している」という麻痺を起こさせ、領海侵入を日常の当たり前の出来事に変えてしまいます。
② 侵入時間の延長
侵入時間を延ばす(10~20時間)ことで、実効支配に近い「印象」を作り出します。国際法上、日本が支配する領海に公船を長時間滞在させ、「中共の主張にも理があるのではないか」という誤解を抱かせ「中国は排除できない」という認知を作り上げます。
③ 追尾・接近・航路妨害等
日本の海保船や漁船に対して、接近、航路妨害、追尾、威嚇機動を行い、接触ギリギリまで接近し、日本に恐怖心と萎縮をもたらし、あるいは日本が自己規制するように仕向け、日本の対応行動を狭めることにより中共が主導権を握っているように印象づけます。
④ 大型・武装化した海警船の投入
海警は警察組織だとしていますが、実態は軍(人民武装警察)の指揮下の準軍事組織で、大きさは1万トン級で76mm砲を装備する武装船で、航空機運用能力があります。これにより日本は「海上保安庁では対抗できない」という心理的劣勢を意識させられます。
武力を用いずに、軍事的優位を認識させる効果を狙っています。
⑤ 漁船と公船の連携行動
中共の漁船団が海警船と連携して尖閣周辺に入り込み、民間を装って行動します。例えば、漁船が尖閣に侵入すると海警が「保護」と称して介入し、そのまま滞在を長引かせる等の行動をとります。
この偽装行動をもって、歴史的な「中国漁民の生活圏」であることを主張し、領有権論争を補強する目的です。
⑥ 領空接近、時間差侵入による対応確認
無人機の飛行、爆撃機や戦闘機のADIZ侵入、領空ギリギリの飛行等を行い、海だけでなく空域でも日本の反応を確かめます。また、侵入するタイミングを毎回変えることで日本側の警戒態勢を乱し、対応コストを増やし、日本の警戒態勢に負荷を与え、人的・組織的疲労を蓄積させ消耗を誘います。
日本の政府、海・空自衛隊の連携や対応能力を確認します。
⑦ 法的な脅迫
「武器使用を認める国内法」である海警法を根拠に、正当な法執行の体裁で威嚇する条件を作り、日本が反応すると、それをきっかけにして「エスカレーションするかもしれない」という恐怖を感じる構造を作ります。
⑧ 外交的な自制のジェスチャー
外交的に、対話路線、首脳会談、安定的日中関係の強調を適宜挟み、恐怖・緩和・恐怖のサイクルで日本に当然の強制措置をとりにくくさせ、日本に「衝突は避けなければ」という自己規制させようとしています。現場には、心理的疲労を与えます。
⑨ 国際的な認知の獲得
国際社会に向けて、中国固有の領土、日本が紛争を煽っている、中国は法執行しているだけだ、という情報戦、宣伝戦、謀略を展開し、「尖閣は係争地(グレーゾーン)である」という国際認知を植え付けようとしています。
3. 戦略的ストーリー
中共のグレーゾーン戦術の本当の狙いは、次のようなストーリーにあります。
① 日本を萎縮させ、
② 尖閣周辺を事実上の準中立地帯にし、
③ 国際社会に係争地と認識させ、
④ 台湾統一後に自然な流れで取り込む、
⑤ 当然、力で押し切れる機会があれば、直接的な占領もあり得ます。
軍事衝突はコストが高いことは認識しています。
しかし、中共はそれを避けながら、心理と認知を変えることで領土を奪う非軍事的手段による、合法性演出型の作戦を展開しています。
4. 結論
尖閣は、心理戦、認知戦の主戦場です。
中共は、公船・漁船・航空機・法律・外交・世論戦・謀略を統合して 日本の反応を萎縮させ、既成事実を積み重ねます。心理的実効支配による国際的な認知の書き換えです。
日本は、中共に負けることのない防衛力を保持しながら、政府から現場の海上保安庁、自衛隊が一体となった対応をとって、心理戦でつけ入る隙を見せないことが肝要です。

