暖かく見守ってくれる家族や信頼できる仲間を持っていることなど、支持的な人が傍にいてくれることは、私たちが生きていく心の支えになります。

ここまで述べてきた自尊感情、感情のコントロール、楽観性、精神的柔軟性、自己効力感のどれをとっても、他者との関係を通じて意識させられるものばかりです。

自分中心にしか考えられない人にとって、他者との関わりは、悩みやストレスの原因にしかなりませんが、すべてのものとのつながりを意識し、生かされていることを感謝する気持ちが生まれたとき、運命とも感じられるような深い愛情や幸福や喜びに気づくことができます。

心理学者のアドラーが「すべての悩みは人間関係の悩みである」と考えたように、人が生きる幸せや喜びは人間人関係のなかでしか得られません。

人が生きる価値や意味は、他人への思いやりや親切な行動をして喜ばれたり、何かのお役に立っていると自覚したり、他者への感謝や愛情を感じたりしたときに見つかります。人の使命感も、そういう日常のなかから生まれてくるものです。

友人とのつながりは、職場、地域などのコミュニティを通じて、社会全体とのつながりに広がります。両親から祖先へのつながりは、時空を越えて、世界中の人たちとつながります。

私たちが現在、当たり前のように享受している豊かさや便利さ、平和や安全・安心などすべてのものは、祖先が多くの人たちと協力し合って営々と築きあげてきた貴重な遺産です。私たちは過去からの結びつきのなかで生きています。

つながりは、人間関係だけではありません。

大自然から受ける恵みへの気づきは、人間という存在が周囲のすべてのものに支えられ、生かされているのだ、という生きとし生けるすべてのものへの感謝の気持ちにつながります。

それは人間や地球というものの存在の不思議、大宇宙の生成、働きの神秘への畏敬の念、スピリチュアルな意識へと発展します。 人は生かされていることに気づき、「大きなもの」につながっていると信じたとき、目の前の逆境が小さなものに思えて、それを乗り超える勇気が湧き、何かの役に立ちたいと考えます。

指導者は、感情に流されて漠然と指導するのではなく、対象者に何を気づかせたいのか、6つの構成要素のどこに焦点をあてているのかを明確にして、接することが大切です。

本人を否定することなく、自分にとって大切なものを見定めさせながら、感情をコントロールさせる。

目の前で起きている現実をありのまま受け入れさせて、そのなかから前向きな「意味づけ」を見つけさせる。クヨクヨせずに前に向かって進んでいくように励ましを与え、やればできる、と自分の能力を信じさせ、アドバイスを与えて行動に向かわせる。

この一連の流れを意識し、一つひとつを周囲の人たちとのつながりのなかで考えさせることによって、より強い気持ちを育てることができます。

レジリエンス、強い心は、多くのものとのつながりのなかで育てられるものです。

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