《今回の「日本語だけに丁寧語や謙譲語があると云われますが、それは間違いで、英語にもフランス語にもあります」という話。国内派で、外国経験のない私は、何度か、読んだり、聞いたりしたことがあるのですが、なんとなく違和感を覚えています。

人間が人間である限り、立場の違いに対する認識は消そうとしても消せないものがありますし、階級意識や貧富の格差の大きな国や地域ほど、言葉にも、生活習慣にも “違い”が現れて当たり前だと思うのですが、それが「言語表現」として存在しない(??)。 「言語表現」として意識されないなら、別のところで強く意識させているのではないか。「日本語だけに・・・」というよりも、それがどこで、どう表現されているのかを知ることの方に、より意味があるのではないか。そんな気がしていますが、如何でしょうか。 》

暁星学園の先輩のAさんがおいでになり、「岡野君、知っている?新橋の屋台のラーメン屋がおいしいんだよ。知っている?」。

「えっ、新橋ですか。新橋のどの辺ですか?」。

「橋元だよ。そう橋元」。

「そんな所にありましたっけ?」。

「ごめん、ごめん。パリのPontポン(橋) neufヌフ(新しい)。パリの新橋だよ。ごめん」。

このPont neuf新橋ですが、この橋、新しい新しいと云いながら、パリを流れるセーヌ川で最も古い橋なのです。

料理のPommes de Terre Pont-neuf ポムドゥテール ポンヌフは、1cm角のフライドポテトのことで、よくいうフレンチフライです。この料理の発祥の地が、この橋元だったことから、この名がつきました。

このAさんに、暁星の卒業生は、いやパリに旅行に行かれた方々は、皆、お世話になったはずです。そう、J航空の支店長で、シャンゼリゼ通りに赤い鶴のマークを見てホッとした方々。道を聞きに入られた方。また何か事があって行かれた方もあったと思います。

1970年代、どれほど日本人に安心感を与えてくれたかと思うと、感謝の言葉しかありません。

この会話は、今から6年前に久しぶりに日本に遊びに来られたときの話で、Aさんはフランスが大好きでついに、国籍をフランスに帰化なさいました。

同じJの女性の方で、もう一人方。シャンゼリゼ通りのホテルの一室で貸本屋さんを開かれた方がおいでで、私も大変お世話になりました。

私の人生で、このときほど本を読んだ時代はありません。吉川英治さんの宮本武蔵や三国志は、寝なければいけないと思いながら、面白くて、次はどうなるのだろうかと思って読んでいるうちに、空が白み初めていました。

團伊玖磨さんのパイプの煙は、日本にいるときから読んでおりましたが、またパリでも読めるとは、思ってもおりませんでした。特に面白かったのが、日本銀行に電話をして数字の神様の話や、息子さんを連れられての東南アジアの旅の、こんな国もあるんだという話が、18歳の私にはとてもショックでした。

私は15歳の秋から日本語と少し距離を置いて生活しておりました。とは云っても、マンガは読んでおりました。フランスに渡った当時、「あしたのジョー」が終わる頃だったので、どうなったのだろうと思っていると、友人が送ってくれ、あの燃え尽きて真っ白の絵が今でも目の前に浮かんできます。

ところで今回、この文章を書こうと思ったのは、たまたまラジオで伊東四朗さんが「漢字ってすごいよな~。一文字で意味が伝わるのだから」とおっしゃっているのを聞いて、私もそう思ったのがきっかけです。

英語に言い換えれば、漢字の一画、一画がアルファベットのA・B・Cなのですからすごい表現方法です。

前出の、オートバイ好きの貞源寺の御住職が以前、若者の集いでアジアの方々5人ほどを2週間ほどお預かりしたとき、困ったことにほとんど皆、英語がダメで共通の言語がありませんでした。

(もうお分かりだと思いますが)、皆に聞くと、漢字は分かるというので、ならば筆談すれば良いと思い、実行してみると上手くいき、「話が弾むと、皆、黙って書いていた」と笑っておいででした。改めて、漢字とは何と使い勝手の良い表現方法かと、思います。

そして言葉では、小さな子供たちが汚い言葉や悪い言葉をどんどん使って覚えて行くようで、私もフランス語のバカConとか、きちがいFouなど、直に使うようになりました。びっくりするのが悪口で、その国の言葉が分からなくとも伝わります。多分、それを発しているときの雰囲気やニュアンスで動物としての人間が感じ取るのでしょう。

今までアラビア語圏、ベトナム、タイ、ラオス、もちろんヨーロッパ諸国の人と話をしてきましたが、彼ら、彼女らも同じように感じ取っていました。

最後に、よく日本語だけに丁寧語や謙譲語があると云われますが、それは間違いで、英語にもフランス語にもあります。スラングもその一つですし、確かに英語の相手を指す場合には、あなたも、お前も、君も、Youですが、これに続く動詞によって違いが出てきます。

フランス語でも、あなたVousヴゥー、お前、君、Tuチュと変わります。

NHKフランス語講座で、君、お前のTuを使うTutoyerチュトワイエ(動詞)を推奨していますが、私はそれには反対です。

NHKの方がうちに来られると云うのですが、初めて会った人に「お前」と云われるよりも、「あなた」と呼ばれるほうが気分的に良いので、フランスでも初めての相手に、お前呼ばわりはしません。

注)Vousは、主語として二人称複数、あなたたちを意味しますが、これはフランス語を習う1日目に説明すれば、小学生でも分かります。

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