5 ストレスは悪いものではない

ストレスについて見てきましたが、ストレスによって交感神経が刺激され、身体の働きが活発になるわけですから、すべてのストレスが悪いと言うことではありません。人が能力を発揮するために、不可欠な働きをするものなのです。

例えば、災害に遭遇したときに、動悸が激しくなり、カーッと身体が熱くなるのは、人間の力を発揮させる上で極めて正常な反応ですが、何週間、何ヶ月経っても、災害現場を通りかかるたびに同じ状態になる、というのは正常ではありません。

あるいは、流れに乗って何も考えずに過ごしているときにはストレスは生じませんが、何か自分が目標とするものを達成したい・・・・上手にしゃべりたい、上手くやりたい、勝ちたい、良い成果を上げたい・・・・と強く思えば思うほど、ストレスは、その思いに比例して大きくなってきます。

そういう意味では、一定のストレスを感じるのは一生懸命に生きている証拠で、ストレスは、あなたが成長するための糧として与えられているものだと考えて、前向きに向き合う努力が必要です。

ただ無理をして、自分が潰れてしまっては何にもなりませんから、緊張状態になっても、落ち着いて冷静に判断できるようにストレスをコントロールする方法を身につけることが重要なのです。

そして、その方法は、次第に、科学的に明らかにされてきています。

その一つは、何かに取り組むときに目的意識を持って、目標達成だけに集中することによって、自分自身の心をコントロールするノウハウです。

古代から宗教者が瞑想をしたり座禅を組んで修行したりする、武人や一流のスポーツ選手が戦いや試合に際して集中しようとするのは、これです。

一流の人々が実践してきた行動と効果、一部の人々だけに伝えられてきた隠されたノウハウや心の持ち方・整え方の秘密を科学的に解明しようとするさまざまな心理学や生理学などの学術的な研究成果があります。

もう一つは、軍隊が養ってきた、自分の生命だけではなく国家の存亡をかけて戦争を遂行するという究極のストレス状況下で、正しく判断し、無駄なく、効率的に実行し、任務達成の確率を高くするための“論理的な思考方法”にヒントがあります。

生命のかかった究極のストレスがかかるなかで、最悪の事態を確実に避けるための思考方法です。これは、文字通り、実戦を通じて、研究成果に改善を積み重ねて、証明された智恵の結晶です。

それは、どのようなことがあっても、どのような状況下にあっても、感情を入れず、論理的かつ客観的に思考し、判断するためのノウハウです。

この思考過程は、多くの学者によって、戦いの思考方法から危機管理の思考方法へと敷衍され、さらにはビジネススクールで、競争社会を生き抜くためのマネジメントの教材として取り上げられ、多くの経営者によって語られています。

しかし、無駄のないシンプルさ、本質を突いた普遍的原則を具現した、軍のマニュアルを越えるものは、見たことがありません。

究極のストレスに勝つレジリエンスは、自分の心に勝つために、考え方を整えるノウハウだと言えるでしょう。