1 「笑い」と副交感神経

何かの刺激を受けて、緊張したり興奮したりしなくてはいけないと脳が判断したら、交感神経系が活動します。

安心できる状態では、脳がリラックスしても大丈夫だと判断し、副交感神経系が活発になります。頑張らねば! と肩に力が入ってガチガチになっている時に、「笑い」が起こることで、サーッと緊張がほぐれたというような経験は、誰にでもあるでしょう。

「笑い」には、私たちが本来持っている実力を十分発揮できるように促すリラックス効果や「怒り」を抑える効果があります。

「笑い」やそれに伴う身体の反応は、副交感神経が活発に活動した結果、発生する反応ですが、逆に、笑うことで脳から副交感神経系にサインが送られ、強制的に副交感神経系が優位になってリラックスできるのです。

つまり、笑顔はリラックス状態をつくる、ということです。

2 人間関係の潤滑油である「笑い」

人間関係において、「笑い」は重要な役割を持っています。挨拶のときに笑顔になるのは、相手に対して敵意を持っていないことを表すサインですし、「一緒に笑う」のは、優劣を競い合ったり肩肘を張ったりする、緊張関係にないことを表しています。

例えば、自分のちょっとした弱点を「笑って」さらけ出した「笑い」が潤滑油となって、周りの人との親密度が増したり、自分を少しさらけ出してみると簡単に仲良くなれたり、のびのびと気楽な人間関係を築けたり、するものです。

緊張しているときに、周りで起きた面白い出来事などを話すだけで、自分自身や周囲の人の緊張感がパッと解けるかもしれません。

「笑い」は、緊張状態を緩和する潤滑油として、日々のストレスで緊張した身体と心を緩和する、とても良いリラックス方法の一つです。

最近では、「笑い」による免疫力のアップをはじめとした健康増進効果が注目を浴びていて、身体的健康のためにも、精神的健康のためにも、上手に「笑い」を取り入れようという試みが増えています。

3 「笑い」と幸福感、やる気

「笑い」は、人間にしかできない喜びの表現です。

嬉しそうな顔をする動物や“笑ったような顔”をしている犬やネコはいても、決して笑っているわけではありません。

「笑い」があるというのは、人間が人間らしく生きている証です。

『ストレスにかかわる脳内伝達物質』で述べたように、オキシトシンというホルモンは、別名「幸せホルモン」と呼ばれています。また、「快楽物質」として知られているドーパミンは、やる気や快楽に関わり、目的達成のために「やる気」を引き出し、行動を起こすことの原動力になると言われています。

人間の感情はこの脳内伝達物質に影響される、あるいは自分のしたことが上手くいったり失敗したりするという行動の結果が感情に表れるのですが、研究の結果、その逆もアリだということが明らかになっています。

身体表現によって感情が左右される、ということが分かってきたのです。

つまり、“笑った顔”が嬉しい気持ちを引き出す。“力強いポーズ”が自信を引き出す。“笑った顔”を作れなければ、楽しい気持ちにもなり難い。

「感情は、感情行動と身体的反応の原因ではなく、結果なのだ」ということです。

どんな困難にあっても、背筋を伸ばして、顔を上げ、大変そうな仕草をしない、苦しい顔や辛そうな顔を見せない。

ユーモアを忘れず、笑顔を見せる・・・・・。その笑顔が、ストレスを追い払い、幸福感ややる気を引き出してくれます。

『幸福論』で有名なフランスの哲学者(1868-1951)アラン/エミール=オーギュスト・シャルティエの言葉です。

「悲観主義は気分によるもの、楽観主義は意思によるもの。

人は幸せだから笑うのではない。

笑うから幸せなのだ。」

https://www.saibouken.or.jp/archives/3111