ここでは、災害の場面です。いつ、どこで、災害に出会うかも知れません。

もし、あなたが救援活動に参加する機会があるなら、救助活動や瓦礫の除去や復旧作業などの傍ら、現場で接することになる被災者の方々の心のケアのノウハウについて配慮して頂けると、特に長期的な視点でのメンタル面でのケアに役立つものと思います。

災害時のメンタルヘルスケアについて書いていますが、日常生活のなかで、ストレスがたまって落ち込んでいる方たちをフォローする場面でのノウハウや配慮にも通じます。

1 被災者支援の基本的心構え

  • 事前の準備

・自らの状況を整える。

・災害ストレスについて正しい知識を持つ。

・地域のさまざまな情報を知っておく。

  • 出向いて行って、働きかける

・「助ける者」と「助けられる者」の関係をつくるのではなく、「助け合う」気持ちで接する。

  • 被災者が自己決定できるように被災者の考えを尊重する

・ひたすら聴くことが基本。

・専門用語は使用しない。

・デマ、うわさに注意して、正確な情報の伝達に努める。

  • 必要に応じて、専門家に橋渡しする
  • 支援者は、二次受傷者になるので注意する

・セルフ・チェックに心がける。

2 災害時の初期(被災後3日目まで)対応

  • 被災者をできるだけ安全な場所に誘導・保護する
  • 安全・安心・安眠をできるだけ早く確保する

・傷病者の応急手当に努めます。

・基本的生活必需品、衛生用品の確保に配慮します。

・睡眠を確保できる環境をできるだけ早く提供します。

  • 精神的動揺の著しい住民のケアを重視する
  • 被災者の孤立感を和らげ、援助のネットワークによって“支援者に守られている”ということを認識してもらう

・すべてを一人で解決しようとしてはいけません。

・ニーズを読み取り、支援者の連携をとって、応えましょう。

  • 大切な人を亡くした方への対応は、特に配慮する

   ・喪失の受容

傾聴した上で、故人のことは過去形で語ります。死亡という事実にくり返し触れながら話すことで、喪失を受容することをうながします。

・悲嘆に伴う感情の表出

悲しみ、怒り、罪悪感といった感情を抑えずに表に出せるようにうながし、その感情をしっかりと受け止めるように表現をしていきます。

・新たな環境への適応

新たな環境に適応していけるように助言や援助を行います。故人が現実生活面で重要な役割をになっていた部分を引き受ける手当てをみつけ、生活を再建するようにうながします。

・故人への思いの再配置

故人の思い出を、心の中心から片隅に移して持ち続けながら、その後の人生を築けるようにうながします。

3 傾聴時のポイント

  • ストレス反応を軽減させる最もよい方法

・被災体験をひたすら聴くことです

・最初は被災状況や体調から、ゆっくりと自然な感じで話しかけます。

・相手の気持ちを聴き、感情をあるがままに受け止めます。

・途中で話を妨げないで、相手の目を見て、共感する姿勢(うなづき、あいづち)で聴きます。

・無理に聞き出すことは避け、共感した話題に関心をもって掘り下げます。

・安易な励ましや助言は禁物です。

・災害時を無理に思い出させるような聴き方は避けます。

  • 怒りへの対応

・怒っている人は支援者を責めているのではありません。いっしょに深呼吸して、心を落ち着かせて対応します。

・被災者の怒りは、否定せずに受け止めます。

・感情を受け止めた後に、具体的に困っていることなどを聴きます。

・感情のコントロールを失っている場合には、話を中断することも必要です。

  • 深い悲しみへの対応

・泣くことは、大切なものや人を失ったことへの自然な反応であり、悲しみを抑える必要はありません。

・相談者の傍に寄り添うことに意味があります。ゆっくり、良く話を聴くことが大切です。

・相談者の感情に巻き込まれず、一定の距離を保ちましょう。

  • スキンシップ

・触れて肌のぬくもりを感じることは、恐怖、悲しみ、怒りを和らげる効果のあ  る有効なコミュニケーションです。

・隣に座る、別れ際の握手など。

・高齢者の肩を揉み、子供には抱っこをするなど。

・身体的接触を嫌がる人もいます。人と場に応じた対応を考えます。

  • 次のような場合は、早期に専門機関につなぐ

・強度の不眠が続いている。

・強い緊張と興奮が取れない。

・幻覚、幻想、被害的言動が目立つ。

・表情がまったくない。

・ストレスによる身体症状が深刻

・ひどく落ち込んでいたり、自殺の恐れが感じられたりする。

・心的外傷後のストレス症状が顕著

  • 支援活動は、記録して引き継ぐ

・職員交代時、長期的な支援の際に必要です。

・チーム内で情報を共有しつつ、プライバシー保護に配慮しましょう。

  • 常に、災害復興の全般状況を把握しておく
https://www.saibouken.or.jp/archives/3287