3 陸上自衛隊の職場作りの要素

先に述べたように、私の経験では、職場を改善しようとするとき、個別の問題点を一つずつ、改善して、つぶしていくことも必要ですが、風通しの良い人間関係と雰囲気の良い職場環境を作ることに、優先的に取り組みながら個別の問題点を解決していくことで、組織のレジリエンスは飛躍的に高まりました。

良くない環境では、なかなか改善が定着しません。

良い環境ができれば、そのなかで悪い芽が育つことはありません。

安心して、失敗を語ることのできる環境をつくれば、どんどん改善されていきます。

陸上自衛隊では、組織の精神的な構成要素を、団結、規律、士気の三つの要素でとらえています。

・団結:皆で助け合い、協調して目標に向かう力

・規律:任務に忠実に、組織内のルールを守り、組織的な行動を可能にする力

・士気:一人一人のやる気や参画意識

この三つで組織を評価し、これを高めるように、組織を管理していきます。

その評価基準の源とするものは、部隊の任務であり、指揮官の示した目標や目的、指針になります。すべての評価基準をトップリーダーの意図に集約させることで、組織の強さを評価することができるのです。

この評価は、隊員一人ひとりの意識調査結果に基づいてなされます。

もちろん、指揮官は指揮官で、隊員の意識を通じて、組織の団結・規律・指揮という要素から評価されるわけです。この評価は、人事評価とは別のものだとしていますが、リーダーシップの実態が非常によく現れます。

4 仕事を円滑に進めるノウハウ

職場に赴任した人たちが、苦労する原因は、三つです。

① 自分の仕事の内容が分からない

② 業務の進め方が分からない

③ 職場の人間関係が分からない

職場で後輩や新人に仕事を教えようと、努力している人をよく見かけますが、教えようとする側の関心は①にあります。

しかしよく見ていると、ほとんどの場合、自分の仕事の内容が分からないのではありません。②と③が絡み合って、業務の進め方が分からないので戸惑っているのです。なぜならば、規則にもマニュアルにも書けない、その職場独特のものがあるからです。

仕事の内容をアドバイスした後、仕事を進める手順と、そのときの属人的な配慮(人間関係など)をアドバイスすると、アッという間に仕事が進みます。一度職場での問題を解決すると、問題解決能力(レジリエンス)は飛躍的に強くなり、自分で問題に対処できるようになります。

問題の焦点をしっかりと把握して、ニーズに合ったアドバイスすることが組織のレジリエンスを強くします。

上司は、部下の仕事を軽くするのが仕事ですから、指導ばかりして、部下の負荷を増やすのは上司としては失格です。

部下には、ただでさえ負担がかかっているのですから、知っていることは出し惜しみせずに教える。気がついたことは、負担がかからないように十分に考慮しながら言う。答えは、分かりやすく、はっきりと言う。そういう配慮が必要です。

新しい職場に入ると、これまでの人間関係が一変します。

特に学生は、その人間関係に戸惑います。今の社会では、家庭での躾はバラバラになっていて共通性がありませんから、挨拶一つ、同じ意識ではないと思った方がよいでしょう。

それを画一化するのは難しいですから、もし教えるのであれば、最低限のものに絞らなくてはなりません。

  • 挨拶の仕方
  • 名刺交換の方法
  • 電話の応対
  • メールの出し方
  • 挨拶状の書き方
  • 服装などのTPO

それができないのは、教えざる罪です。

業務のやり方も、職場毎、長年の慣習で定着しているものが異なります。

  • 用語
  • 文書のフォーマット
  • 報告要領
  • 会議などの実施要領
  • 意志決定の手順

組織の機能分担さえ明文化されていない組織もありますし、大きな組織になると、所掌毎に業務要領を変えるものですから内容に整合が取れていなかったり、重複していたりすることがあります。

こういったことを一つひとつ見直し、改善して、効率的に仕事のできる職場をつくることが、レジリエンスに直結します。

職場のレジリエンスは、生産性そのものです。

https://www.saibouken.or.jp/archives/3299