《 フランス人と日本人の安全に対する(身を守る)意識の違いが、よく出ています。フランスの軍隊で最初に教わること、文章では「遣ってもよいが・・・」という文字で書かれていますが、本当は違う文字の意味で、語られたのでしょう。「そのままの表現は日本人にとっては生々しくて、ちょっと憚るなぁ」と仰っていましたから・・・(笑)。 》

フランスに行ってビックリしたことが、結構ありました。

今はどうか分かりませんが、1970年代、例えば、車の運転、Avenu  de Champs-Elyseesシャンゼリゼ通り(Avenuアブゥニュ 並木のある大通り)などでは、平気で90km/hで走っていました。その代わり、裏通りに入ると、皆、徐行します。保険が高いので、気をつけていました。フランスでは、右側から来る車が優先で、シャンゼリゼ通りの坂の上の凱旋門Etoileエットワール(ロータリーの外側に星状に道が分かれているから)のようなところでは、前と右側を見て、皆、突っ込んできました。

私が運転免許を取ったときは、日本のように自動車学校はあるのですが、初日から路上での教習でした。それも非常に現実的で、夜明けの時間帯、日暮れの時間帯、渋滞のなか、商店街、住宅街、高速道路・・・というような、時と場所と状況を選んだ、教え方でした。そのとき教官が言ったのは、「自分は本当に交通法規を守って運転できるか? 自分が守っていなければ、当然、相手も守っていないのだから、本当に気をつけなさい」と。

私の仲間は皆、徴兵役に行っていたので、軍隊で一体何をしているのか問い質すと、最初に教わることは、『遣っても良いが、遣られてはいけない』ということだそうで、だから皆、自分の身の安全の確保には自分で気をつけるようになるのだとのこと。10年ちょっとフランスにおりましたが、交通事故は一度も見たことはありませんでした。

また、歩行者優先というのも、「車の運転は道具を使っているのだから、運転者の方が気をつけるのが当たり前だ」と言って、赤信号でも、自分が安全だと思えば平気で渡っていきます。

フランス人は車が本当に好きですが、移動の足の一つだとしか考えていないようで、きれいな車は少なく、駐車するにも日本だったならばこんなところには駐車しないというようなところにでも、バンパーを相手の車に押しつけて割り込み、また出て行きます。

駐車で面白いのは、住民に公平になるように、月の前半は右側、後半は左側というように、位置を変えていました。車検が無かったので、古い車が一杯走っていました。

また結構丈夫なので、ル・マン24時間のように1日で1000km走ることは当たり前でした。

事実、地中海にいるとき、オーナーのM.Girardジラール氏(Santonサントン)から朝7時に電話があり、当たり前のように「トシオ、今シャンゼリゼにいる。昼に店を開けるから準備しておいて」と。

パリから店のあるGrimaudグリモ(St.Tropezサントロッペから内陸に15kmくらい入った小さな村。毎年、この村でフランスの羊毛の値段が決まる)まで約900km。無理だと思うでしょうが、ポルシェを200km/hで飛ばして、昼前に着いたこともありました。

今、思うと、18歳で何も知らずに渡仏したので、毎日を当たり前のように過ごしてきましたが、その国、その地方で、それなりの理由があって、独特の習慣が培われてきたのでしょう。地方の話も面白いので、またお話しします。