総務省消防庁

「総務省消防庁」は消防組織法上に位置づけられた組織で、消防に関する制度の企画及び立案、広域的に対応する必要のある事務などを任務としていて、消防関係法令の改正管理、緊急消防援助隊・国際救助隊といった広域部隊の派遣調整、消防の広域化の推進、消防関連の補助金、消防統計に関する事務などを行っている。

消防の任務は、消防、災害対応、傷病者の搬送の三つの機能に区分される。

国民保護法の制定以降、武力攻撃事態等における国民の保護も任務となった。

消防庁防災課は、災害対策基本法に基づいて、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡に関する事項を所掌しているが、「市町村消防の原則」から、消防本部に対する直接の指揮命令権限は有していない。

基礎自治体の首長は、消防本部を通じて、消防を運用する。

消防庁は、全国の723消防本部、職員約 17 万人、196消防団/団員約 78 万人を統括し、緊急時には、災害対応の司令塔の役割を果たす。

災害が頻発し、さまざまな不測事態が予想される現在、その重要性は年々高まっている。

緊急消防援助隊等による災害対処

平成7年の阪神・淡路大震災の教訓をもとに、緊急消防援助隊が創設された。

緊急消防援助隊は、大規模・特殊災害の発生に際して被災地の消防機関だけで対応できない場合、消防庁長官の指示により機能別に臨時編成される部隊で、自治体の枠を離れ、部隊指定で被災した基礎自治体に差出される。

平成23 年の東日本大震災、平成30年の7月豪雨、令和3年の静岡県熱海市土石流災害等に出動して、素晴らしい活動を行った。

緊急消防援助隊の登録隊数は6,600隊(令和5年度末)。

大規模災害時、消防庁長官の出動指示により、市町村消防の集まりで編成される。

首都直下地震、南海トラフ地震、東海地震に備えた緊急消防援助隊のアクションプランを作成し、アクションプランを全国の消防本部と共有することにより即座に出動できるように準備している。

消防庁は、緊急消防援助隊の増隊、活動体制の充実強化を図るとともに、消防団を中核とした地域防災力の充実強化、ICT等を活用した地方公共団体の防災・危機管理体制の高度化など、消防防災体制の充実強化に取組んでいる。

東日本大震災では、地震発生直後、消防庁長官から被災県以外の44都道府県に対して緊急消防援助隊の出動を指示、延べ約3万1,000隊、約11万人の隊員が被災地へ派遣し、88日間にわたり、消火・救助・救急活動を行った。

また、東日本大震災に先立って発生した「岩手・宮城内陸地震」での各都道府県の派遣部隊数及び人数は次のようになっていた。

  • 山形県大隊 延べ 136隊555人
  • 埼玉県大隊 延べ  32隊134人
  • 千葉県大隊 延べ  24 隊 98人
  • 東京都大隊 延べ  52隊203人
  • 秋田県大隊 延べ 194隊722人
  • 福島県大隊 延べ  84隊319人

近隣自治体間の相互応援協定を基本としているので、被災地に近い都道府県からの陸上隊の派遣規模は大きく、遠くなればなるほど規模は小さくなる。

被災地に近い都道府県大隊は早く現場に到着するので、活動期間が長くなる傾向にある。

消防庁長官が各緊急消防援助隊の出動を命じ、「市町村消防の原則」により、基礎自治体の長が指揮する。消防庁長官は、出動を指示するが、(被災地の大きな転戦等を除き)現場での活動方針や部隊間の活動調整等について直接指揮命令する権限は持たない。

消防庁には指揮をする根拠がない、権限がない、口を出す立場にない。

部隊の指揮権限は基礎自治体の長が持つ。

都道府県大隊となった場合、その派遣規模(人数)がまちまちになるので、(大所帯になればなるほど)指揮命令系統を統制するのは難しい。

都道府県大隊の上位に統括指揮支援隊や指揮支援隊が組織され、県庁所在地消防本部などの都道府県大隊指揮隊における代表消防本部が指揮する。

臨時編成部隊には指揮運用のノウハウが貯まっていかないので、訓練は苦肉の策として、消防庁が主催し、ブロック毎の「持ち回り」で実施させている。

大災害時、効率的な救援活動を実施するためには、指揮機関の充実と明確な指揮系統の保持は不可欠だ。しかし、「市町村消防の原則」があるので難しい。

法的指揮権限と消防職員養成にかかる問題

防災ヘリは都道府県が指揮し、都道府県ごとに消防大学校が置かれている。これは間違いなく効率が良い。

消防職員は基礎自治体の現場で養われているので、消防職員の行政事務能力は、基礎自治体の役所で勤務したり、都道府県庁に出向したりした職員によって養われている。反対に、出向等の経験がない消防職員は役所の事務を知らない。そして都道府県の役所の職員は、現場を知らない。これは消防庁も同様である。 

そのなかで現場から出向派遣された消防職員が、現場と行政とのコミュニケーションをとるために勤務している。

現場を重視しているという意味で、極めて重要な役割を果たしている。

しかし、現場から出向者を出さなければ、役所とのコミュニケーションは取れないし、消防大学校での教育もできない一方、出向者を出すことによって、現場の定員(実働人員)が減ってしまっている。人材を国や都道府県に出向させるのは良いことだが、それによって現場の消防力を削いで、組織の柔軟性を失っている。

基礎自治体の消防には、出向者数、平均的な不稼働人員数(病気、休暇等)、勤務ローテーション、入校・研修等を加えた人数を職員定数として保持させ、現場は常に“最低100%”の充足率を維持できるように改善するべきだろう。

当然、これは働き方改革への対応も考えての数でなくてはならない。

また、消防職員のうち適任の者がいれば、消防庁、あるいは都道府県庁のキャリア並びのポストに積極的に登用すべきだ。

〔その2〕へ続く。

【参考 all_j.pdf (fdma.go.jp) 】