西東京市は、東京都のほぼ中央、武蔵野台の岩盤の平坦な土地にあり、昔は石神井川の洪水災害などがあったが、治水工事が行き届いた現在、災害は極めて少ない。

平成13年、田無市と保谷市が合併して、西東京市に。地形的な区画になる自然障害がなく、歴史的にも一体感のある地域で、古くは明治23年頃から合併話があった。人口約20万人で、都心のベッドタウン的存在。

市庁舎が、旧市庁舎に分離しているのが特徴で、市長は田無庁舎に所在するが、災害対策本部は保谷庁舎に設置される。

危機管理課の方が「防災上の特色がないのが、一番の特色」と言われたように、災害の少ない基礎自治体の典型的な例。小中学校を、防災の普及に有効活用している。

市内の避難所は、市立の小中学校27カ所を指定し、偏りなく全市域をカバーできている。

平時は、避難所運営協議会と称して、副校長が会議運営責任者、住民代表、行政の代表者(教育と危機管理から)の三者で管理する。避難所を開設する際は、市役所から各避難所に初動開設要員5名ずつを派遣し、用意してある資材、備蓄品を用い、マニュアルにしたがって避難所を開設する。

震度5強以上で全避難所を開設するので、年1回初動要員による避難所開設訓練を実施している。

開設以降は、地域住民を主体とした「避難所運営委員会」を立ち上げて、運営、管理するところが特徴になっている。平時の管理組織「避難所運営協議会」から 円滑に バトンタッチされることが必要。

「防災市民組織」という自主防災組織があるが、文字通りの「自主的」組織で、町内会と連携しているところと連携していないところがあり、全体会議はできていない。大型マンションが建設されるなど、町内会が組織されていない地域が出てきているのが実態。 

各家庭への防災意識の普及は、全戸に配布している「暮らしの便利帳」という小冊子のなかに「防災コーナー」を設け、そこに避難所やハザードマップを記載している。またメールの利用登録者は7千人程度。

小中学校を通じた家庭への普及は、特に有効に機能しているとのこと。

庁舎が、田無と保谷に別れて(約3km)いて、市長は田無庁舎に所在しているが、災害対策本部は保谷庁舎に置かれ、情報は保谷庁舎に集約される。災害対策本部の運営は、マニュアルで定められているというものの、やはり危機管理課と市長及び市の主要部署が物理的に離れているのは問題で、すでに処置済みかもしれないが、市長(秘書)にIT端末を持ってもらうだけで良い。

現状に即した効率的な防災施策を堅実に進められているので、災害対策本部の運営、中高齢者層への防災意識の普及、自主防災組織の組織化など、実効性を高める施策に焦点を当てて、一つずつ重ねていくことが改善の早道。